MASANOBU IN PARIS,1990
写真・文:大内正伸


プロローグ旅立ち建築、寺院ルーブル美術館市場街並、彫刻ロダン、モロー
カフェ、人|ポンピドゥセンター|大道芸人クリシー通り帰国

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ポンピドゥ・センター


リのしっとりした石の建築を見慣れた後で、
突如として現れるポンピドゥ・センターを見たら
誰しも自分の目を疑うことだろう。

思うにパリの建築は古典主義で整理されていて水準が高く、
これに対抗するにはまったく異質な前衛建築をぶつけるしか方法がなかっただろうし、
モダンアートの箱としては。事実それが最善の方法だったのだ。

これは、エッフェル塔と同じモニュメントでもあるわけだ。
しかしこれを受け入れてしまうパリッ子にも感心する。「芸術の街」の矜持なのだろうか。

切符を買ってギャラリーに入ると最初の部屋にマティスがたくさんある。
マティスの原画は日本ではほとんど見たことがなかったが、
色彩が目に焼き付くように飛び込んでくるのだった。ピカソ、レジェの大作や、
ジャン・デュビッフェも印象的だ。





アンリ・ミショーにも再び巡り合う。
そしてたっぷりあるイブ・クライン。海綿オブジェ、
クライン・ブルーの絵画に魂を奪われてしまう。絵から音が聞こえてきた。

なぜかジョルジュ・ルオーの作品がたくさんあって、モダンアートの中にあってぜんぜん弱くない。
ルオーは不思議な作家だ。しかし考えてみれば、
ルオーはマティスとともにモローの元で絵を学んだのだ。そんな時代の作家なのだ。





最上階に行って夕暮れの街を眺める。つくづく美しい街だと思った。
パリには電線がない。自動販売機もない。
モンマルトルの丘の上にサクレクール寺院が見える。そしてエッフェル塔。
パリの建物は高さが揃っているので、モニュメンンタルな建物がきちんと機能しているのだ。

階下に降りると図書館もあって、ここが単なる美術館ではなくポンピドゥ「文化センター」
であることをあらためて思い返した。

ショップでエドワード・ホッパーのドイツ語版の画集を買った。
ホッパーは日本ではまだ画集が出ていないが、
ここでは重鎮の扱いであるのが、なんだか嬉しかった。







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